2007年10月28日日曜日

溶鉱炉の日は消さない

2007年10月27日、羽田で出発遅延となり、まとまった時間ができたので、思い切って、パソコンで論文にとりかかり始めました。
  • 覚えず、作業がはかどりました。
    機内でも我を忘れ、作業を続行しました。
    「神、降臨」です。
    溶鉱炉に火がつきました。
  • 火を消してはなるまい、と鹿児島のホテルでもカンヅメとなり、作業を続行しました。
    昼食は「のり一」、夕食は天文館銀座通りの辰巳亭ですませました。
  • コラム「鹿児島を歩く」の取材も中止です。
    28日、29日もカンヅメで、一気完成です。
    そうすればその後は別の論文をあたためることができます。
  • データや一応の構想がまとまったら、「一気書き」に旅をもってくるのも一法です。
    日常から離れるので、遠くから高くからものを見ることができ、大胆にテキパキと作業を進めることができます。
    今回の論文のテーマは川越なので、地元にいては、虫状態で木しか見えません。
    離れると、鳥になり森を鳥瞰(ちょうかん)できます。
  • 「もったいない感」があるので、集中継続できます。
  • 日常にいると、ひとは完全をめざしがちです。
    すると時間は無限に必要です。
    完璧を期すと仕事はおわりません。
    perfectionist(パーフェクショニスト、完全主義者)とは、結局何もしない人のことになってしまいます。
  • 論文などの重いデスクワークに関しては、1日かかる予定のものは、1週間かかるのが普通です。
    したがって、2日かかると思ったら、2週間を用意しておくことが必要です。
  • 重い仕事をしようとすると、一種の退避行動として、かかる前にものを片づけたり、他の仕事をしたくなるものです。
    本などを読みたくなるものです。
    溶鉱炉になかなか火はともらないものです。
  • 大事なことは、まず始めること、
    まず、着手
    です。
    そして、火がついたら、浮世の義理はかたわらにおいて、継続集中して、火を消さないことです。

2007年10月21日日曜日

五感を刺激するような体験を

立花隆『脳を鍛える』(新潮社)からの摘録です。
東大での講義を再構成したものです。
若い諸君は、海外旅行を含め、五感を刺激するような体験をする必要があります。

五感を刺激するような体験を

「発育途上の神経系に与えうる最高の教育は、五感を全部刺激するような教育である。
たった一つか二つの感覚しか訓練しなかったような人間は、哀れむべき人間の部品にすぎぬ」(リューベン・ハレック)

【桑原コメント】
今 の若者は前頭葉をもっと発達させる必要があります。
温室の日本に長くいると惰眠してしまいます。
海外の旅は五感を刺激します。
実体験に勝るものはありま せん。
環境が変わると、大脳が活性化されます。

本はとばし読みで

本というものは、一読して全部を理解する必要はない。
料理と同じで、移り箸で味見して、本当にうまいものを食べればよい。

【桑原コメント】
この本も、読みとばして興味のある箇所をチェックしておき、再読すればよいでしょう。

恋愛は破綻するもの

20歳前後の恋愛は、破綻することが多い。
それを予防はできず、対策を練ることもできない。
いちばん役に立つのは、いい恋愛小説をいくつか読んでおくことである。
恋愛にはいろんなケース、プロセスがあることがわかり、人の心の複雑さがわかる。

【桑原コメント】
ひとは手痛い体験を何度かして人生が少しずつわかってくるものです。
「青春の失敗は、人生の栄養」です。

失恋をいやすには、また失恋をすること、という人もいます。
だんだん抵抗力がついてくるからです。

生きる上で大切なこと

人間が生きる上で一番大切なことは、生きる意志であり、生きるパワーである。
生命力です。

【桑原コメント】
それよりも、使命感の方が大切でしょう。
使命感があれば生きる意志も自然にわいてきます。
使命感をもつようにつとめてください。
なければ探しだすことです。

大学はなにをするところ?

大学は自分で学ぶところである。自分で自分を教育していく自己教育の場である。

【桑原コメント】
そのためには、知的錬磨計画を練り、常に軌道を修正する作業が必要です。

必要な一般教養教育

バランスがとれた知性をもち、健全な判断力を持った本当の教養人を育てるためには、充実した一般教養教育をほどこすことが必要である。
今大学ではこれと逆 行することをやっている。
文系人には、少なくとも、「物質科学基礎」「生命科学基礎」を学ばせるべきである。

【桑原コメント】
視野狭窄(きょうさく)型の人間が大量生産されています。
数物系の知識は自分で学ぶしかありません。
本を読んで自分で勉強することの必要性がここにもあります。

インターネットが情報革命を

活版術の発明が文献の大量流布を可能にし、精神革命、思想革命、宗教革命を導き、ルネッサンスを生みだした。
インターネットも革命の起爆剤になっている。
【桑原コメント】
インターネットの普及は、活版印刷以上の大変革をこの世に及ぼしつつあります。
この革命はまだまだ続きます。

経済は下部構造ではない

あらゆるものの下部構造は、知の構造である。
知の構造が変われば、経済も政治、社会、文化もかわる。

【桑原コメント】
そして、いま人類史始まって以来の知のフレームワークが根源的に変化しようとしています。
パラダイム・シフトです。
ドキっとするほどスゴい箇所です。ここもドキスゴの箇所です。

科学の先端では大変革が進行中

科学の先端では、いま数百年に一度あるかないかというレベルの原理的大発見へ向けての挑戦が進行中で、自然の見方が根本的に変わるかもしれないところにき ている。
サイエンスに目を向けない文系知識人たちは、人間の知の世界の大変化にまったくついていけない。文系人のサイエンスの知識は、明治時代並である。

【桑原コメント】
ここもドキスゴの箇所です。
実社会では、ゼネラルに科学技術がわからないと適切な判断ができません。
科学の基礎は物理学であるのに、文系人の物理の 知識はニュートンまでの中学生レベルにとどまっています。
物理学の基礎である量子力学と相対性理論は教えてもらえません。
自学自習の必要なゆえんです。

2007年10月19日金曜日

親子関係の市場原理化が招く大学の危機

  • 長年続いた18歳人口の急騰が続き、日本の大学は600におよんでいます。
    バブル期に過剰に膨張した部分に、いま淘汰が及ぼうとしています。
    すべての大学が18歳減少期に生き残れるはずはありません。
  • アメリカが主導する市場原理主義は、国、企業、自治体、地域、サークルにまで及び、選択と集中、競争原理、自己責任、弱者切り捨ての結果、世の中はギスギスし、無力感が満ちあふれ、明日への希望が見えません。
    人の身や心はいたみっぱなしです。
  • 市場原理は親子関係にまで入り込んでいます。
    親は役に立たない大学には金を払わなくなりました。
    退学者が激増している原因は、ここにもあります。
  • アメリカやイギリスでは、親子関係の市場原理化がすすみ、9割の家庭がこどもをお荷物と考えています。
    1割だけが子どもは宝としています。
  • 日本では、まだ7割が子どもは宝だと考えています(2000年以前の統計)。
    しかし急速に、子供は家の宝からお荷物へとなっているようです。
    けなげな親が消滅しつつあります。
  • 今大学改革の主導者は、教授会でも理事会でもありません。
    受験生市場です。
    大学は、世界標準に適合し、ユーザー(受験生や親)の要望を満たすものに再編しなければ、生き残ることができません。

【追】
日本国を家庭の家計になぞらえると、月収40万円なのに支出は58万円で、毎月18万もの赤字がふえている状態です。
いずれ、アメリカのとなえるグローバリズムは終焉を迎えるでしょうが、この暗い時代が終わるまで、日本の若者は、自分の足で立ち、考え、発言し、しっかりしなければなりません。

2007年10月17日水曜日

医学の常識を超える千日回峰行

在韓中の2007年10月13日、千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)のニュースを耳にしました。
医学は、千日回峰行を説明できません。
  • 千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)は、7年間毎日比叡山を30キロほど走るところから始まります。
  • 激しい荒行で大きなカロリーを消費するにもかかわらず、食事はうどん、ジャガイモ、豆腐半丁を1日2回だけです。出力量と入力量が違いすぎます。
    7年目は、100日間が1日84Km、300カ所の巡拝となります。
    睡眠時間はわずか2時間です。
    医学では説明がつきません。
  • イラク人を見ていると、砂漠のようなところに住んでいて、野菜をとっていません。体格もよく元気です。
    モンゴル人も野菜をとりません。健康です。
  • 学生時代、『パプアニューギニア高地民』の畑中幸子さんから直接話をうかがいました。
    「かれらはサツマイモしか食べないのに、健康です。」
    豆は空中から栄養分を取り入れます。人間にもそれができるようです。
  • 禅のお坊さんが、小食なのに頭がひかり健康そのものなのは、長年の鍛錬で空中から栄養分をとっているからでしょうか。
  • スウェーデンの調査では、人間ドックを受けない人のほうが受けている人より長命だとか。
    高齢者がうけると、必ず3つ、4つの悪い箇所がみつかり、それの治療の過程で、精神的にめいってしまうことが原因のようです。
  • 中国の仙人は、運気の生ずるところで霞を食べて生きるといわれています。
    坂戸市の道教寺院「聖天宮(せいてんきゅう)」も、運気が生ずるところに建立されたと聞いています。

  • さて、千日回峰行の最後は、「堂入り」です。
    ほらあなのような堂の中で、ひとり、9日間、眠らず、食べず、水も飲まず、横にならず、真言を10万回唱えます。
    断食断水、不眠不臥(ふが)といいます。

  • 医学は、まだ小学校1年の段階にあるようです。
【cf.】

2007年10月16日火曜日

障害者の「害」について

障害者を、「害」の字をきらって、「障碍者」あるいは「傷がい者」と記す人がいます。
しかし、次のように「障害者」に固執する人もいます。
  • 障害とは、公害、薬害、事故などの障害によって後遺症をもたされた人のことです。
    障害は、障害をもつではありません。
    この責任は、国や、自治体や、企業や、社会全体にあったりします。
  • 「障がい」では、障害の責任はどこかへ行ってします。「身障者」でも同様です。

  • 水俣病では、大量のメチル水銀を廃棄し続けた企業のチッソばかりでなく、国も熊本県も自治体も地域社会も加害者となり、多くの人に「障害」を与えました。
  • 水俣病ウィキペディア
  • 水俣病【画像】

  • 【追】
    障害者から、わたしたちは、純朴な愛、素直さ、正直さ、元気をいただきます。
    わたしたちが、なにかをほどこすのではありません。

2007年10月8日月曜日

なぜ企業は労働分配率を上げない?

  • 好景気だけど個人所得は減っています。
    勤労者家計可処分所得は、2005年には、1997年とくらべると、1割以上も減っています。
    これが個人消費低迷の理由です。
    使うお金がないのです。
    企業の利益は、1998年は21兆、2005年は52兆で、2倍以上ふえています。
  • 労働分配率とは、会社のもうけをどれだけ従業員に渡しているかの割合です。
    1998年にはもうけの70%を渡していましたが、2006年には62%に減ってしまいました。
    さらに減り続けます。
  • 企業側の言い分は、経常利益の7割近くが海外活動、マネーゲーム(海外金融資産の運用)によるものだから、国内の従業員には還元しない、ということです。
  • 海外で働く日本人もふえています。いまバンコク日本人学校1校の生徒数は2300人です。

2007年10月2日火曜日

ビスタでおわりのマイクロソフト

  • 1995年、ネット時代の到来を読めなかったビル・ゲイツは、ネットスケープを追撃するために、インターネットエクスプローラを無料にするなどなりふり構わない商法を展開しました。
    結果として独禁法違反訴訟を抱え込みました。
  • ウェ ブ2.0時代を迎え、グーグルはGメールやワード、エクセル、パワーポイントにあたるソフトを無料で提供しています。
    それらのファイルは、自分のパソコンにではなく、空 の上に収納されるようになっています。
    どのパソコンからでも利用できます。
    ビスタのような高機能のパソコンはいらず、オフィス2007(ワード、エクセ ル、パワーポイント)も不要です。
  • ビル・ゲイツ(Bill Gates= 請求門)は、ユーザー無料時代を予見できず、ビスタで、オフィス2007で高額の請求をユーザーにおこなっています。
    マイクロソフトを必要としない時代がもうきています。


2007年8月20日月曜日

経営の不透明性が招く会社の破綻

  • 企業、公共機関には、主観的な努力の他に、無数のYouの審判に耐えられる透明性、CSR(企業の社会的責任)、アカウンタビリティ(会計などの説 明責任)、コンプライアンス(法令順守義務)が求められてきています。
  • また内部告発(公益通報者保護法)にも耐えられることが必要です。
    これらを欠く企業 には不二家、ミ-トホープ、石屋製菓 白い恋人の二の舞が待っています。
  1. CSR(企業の社会的責任)
  2. アカウンタビリティ(会計などの説明責任)
  3. コンプライアンス(法令順守義務)
  4. 内部告発(公益通報者保護法)

2007年8月4日土曜日

日中のぎくしゃくは続く

日中関係の歴史的変遷

  • 古来より東アジア社会は、1強を頂点とする上下社会で生きてました。1強多弱で秩序が守られてきました。伝統的に中国が東アジアの覇者でした。
  • 弱肉強食の帝国主義時代に中国は惰眠をむさぼっていました。日本は明治時代に西欧の仲間入りをし、東アジアの雄になり、現在に至っています。
  • 2000年頃から中国が台頭し、東アジアに有史以来はじめて2強の時代が到来しました。2強はケンカの仕方がわからず右往左往しているのが現状です。ルールを作る必要があります。
  • 英・仏・独が殺伐の歴史を反省し、けんか疲れして、対話の世界に生きていることは参考になります。
    日、中、韓が「東アジア共同体」つくり、対話の世界を築くには30年~50年以上必要でしょう。
  • 共同の歴史教科書の発行が対話への第1歩になるかもしれません。
    ドイツ語で、「歴史Geschichte ゲシヒテ」とは、「物語」の意味もあります。歴史は創作するものでもあります。
  • 「金持ちけんかせず」といいます。中国の国民所得が向上を期待するところ大です。 3000ドル以上になると、国民は個人主義的になるといわれます。
    国民所得は、中国 840 ドル、日本 35620ドルです。


  • 政治家は愛国者であっても、市民は「愛郷者」であってほしいものです。
    郷里は見えても国家は大きすぎ、抽象的でよく見えません。
    国家はウソをつきます。
    〇patriot(パトリオット、愛国者)、 △nationalist(ナショナリスト、国家主義者)、 ×jingoist(ジンゴイスト、盲目的愛国主義者)

  • 歴史は50年たった地点でながめると、人間の愚行の固まりです。
    現在の市場原理主義一辺倒は後世の物笑いです。
    わたしたちは、鳥の目で大きく世界、歴史をながめるくせをつける必要があります。

2007年7月11日水曜日

知識社会ははじまったばかりである。

知識社会

  • 知識社会は始まったばかりです。人類は、1万年の農業革命、300年の産業革命を経て、 情報革命のまっただ中にあります。
  • 農業革命は農業社会を生み出しました。
    農業革命には1万年を要しました。
    農業革命がはじまったのは、人類500万年の歴史のうち、ほんの1万年前です。
  • 産業革命は工業社会を生み出しました。
    産業革命は、工業という新たな価値観を生みだし、わずか300年で近代社会を築き上げました。
  • 情報革命は知識社会を生み出します。
    情報革命は、今までよりはるかにスピーディーで、巨大な変革を起こしつつあります。
    50年ほどで知識社会をつくりあげるでしょう。
    今先進諸国は、農業社会であり、工業社会でありながら、その上に巨大な知識社会を生み出そうとしています。
  • 2005年11月に旅だったドラッカーは、「知識こそが本当の資本である」と説きました。
    また、「企業にとって最も重要な資産は知識労働者である」とも語りました。
    会社員は、たんなる必要経費ではなく、磨けば膨大な価値を生む宝石の原石ということです。
    農業社会では資源は土地でした。
    工業社会では工場でした。
    知識社会では資源は知的労働者の頭の中にあります。
若い知識人には、ここ数十年、無限の可能性があります。

【追】
情報革命の「情報」とは、informationではなく、IT(Information Technology、情報技術)のことです。
情報革命には、技術を必要とします。
技術とは、インターネットをクリックしてみるだけでなく、ブログなどをつづることを含みます。
ゲームをするだけでなく、図形描画などで何かを作り出すことを含みます。
技術は、日々変革します。
変革する社会に応じて、自分も変革する必要があります。
SJT(自己開発、Self Job Training)により、みずからをバージョンアップし続けることをエンジョイしたいものです。

2007年7月8日日曜日

自分経営、組織経営とは時間管理のこと

自分経営、組織経営とは時間管理のこと

  • 仕事術や時間管理の本が売れています。
    日本のホワイトカラーの生産性を上げるのが、至上命題になっています。
  • 経営学の神様ドラッカーは次のようなことを言っています。
    「一日一日の時間経営(time management)ができる人が、自分経営(self management)ができる人です。」
    時間の有効経営ができて、はじめて自分経営(セルフ・マネージメント)ができます。
  • 自分経営ができて、組織経営をする資格があります。
    時間経営、自分経営、組織経営、これを管理の3ステップといいます。
  • 組織とは、自分のまわりのグループ、家族、職場、会社のことです。
    二人だけの組織もあります。
  • 世の中で活躍している人は、時間の有効な使い方と思想をもっています。
    時間管理の達人です。
    ドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』が全世界に先駆けて日本で2002年5月に発売されました。
    ネクスト・ソサエティとは、歴史がみたことがない社会のことで、もうはじまっています。
  • 社会が経済を変える時代です。日本には、経済問題はなく、あるのは社会問題です。求められているのは、社会制度の変革、政策の変革、慣行の革新です。
  • ドラッカーは次のような言葉を生み出しました。
    「分権化」「事業部制」「目標管理」「知識労働者」「民営化」「時間管理」
  • ドラッカーは何十冊もの本を書いています。
    その要諦は、時間管理=「いかに有効に時間を使うか」です。
  • 孔子の「修身斉家 治国平天下」(しゅうしん せいか ちこく へいてんか)とは、
    「身を修め、家を斉(ととの)え、国を治め、天下を平らかにする」
    とのことで、ドラッカーは孔子と同じことをいっています。
    孔子(紀元前552年生まれ)の時代には時計はありませんでした。
    孔子は政治に、ドラッカーは企業に重点をおいています。
    ドラッカーのエッセンスは時間管理、孔子のエッセンスは「平天下」です。

時間に関する英語のことわざ
  • He that is master of himself, will soon be master of others. おのれを制するものが、やがて人を制する。
  • Punctuality is the soul of business. 時間厳守は仕事の極意 

2007年7月2日月曜日

市場原理主義の構造

社会構造はダイヤ型から「さかさじょうご型」へ
  • 鈴木大拙は、
    「西欧文化にはものごとを二分してしまう傾向があり、世界文化の形成におもしろからぬ影響をおよぼす。
    それに反して東洋の思想には対立を超える英知がある」
    と述べましたが、彼の望んだ時代はかえって遠のいているのが現状です。
  • アメリカが主導するグローバル資本主義思想が世界を席巻し、
    「選択と集中」
    「市場主義」
    「競争社会」
    「規制緩和」
    「構造改革」
    「小さい政府」
    「地方分権」
    「自己責任」
    などの標語が喧伝(けんでん)され、深く進行しています。
  • デジタルデバイドに象徴される「選択と集中」は、少数の国、少数の都市、少数の企業、少数の人を選別し、他を切り捨てることであり、「選別と切り捨て」の別名です。
  • 今や生産性の高いところと低いところの格差はひろがる一方です。世界はギスギス社会となり、無力感、閉塞感が漂い、明日への希望が見えません。
    人々の身や心は痛みっぱなしです。
  • しかし、これからの社会の基調は「国際協調」で、資本主義観にしても株主至上主義から従業員、顧客、地域社会、地球環境をバランスよく配慮したものになるべきです。
  • 日本においても、蕉風の「不易流行」の精神に立ち戻る必要があります。
    「流行」は時代とともにどんどん変化していくものですが、「不易」はグローバリズムの風潮の中にあっても変えてはならない終身雇用などの日本社会の土台です。
    闇雲なギスギスした市場原理主義を相対化し、中間層をさらに厚くし、みんなが少し貧しく、人間が主人公であるようなおもいやりのあるシットリ社会をめざしたいものです。

松阪現象とワーキングプアは同根
  • 強いものはより強く、弱いものはより弱く、という方向へ社会構造がどんどん変化してきています。プロ野球に国境がなくなったおかげで、松坂の年俸が10億を超えました。
  • 国境がなくなり、また仕事の平準化が進んだために、時給1000円の仕事も「よその国では100円で引き受けていますよ」との声のもと、どんどん引き下げられています。
  • かつてはレジでの会計は数字うちに一定の技術が必要とされましたが、いまでは商品を読み取らせるだけでOKとなり、いずれ機械が価格を自動読み取りするようになります。
    企業は誰がやっても同じという仕事をどんどん拡大させています。
  • 国内の雇用者数は5000万人、そのうち非正規雇用者は3分の1の1700万人を占めます。
    非正規雇用者とは、パート、アルバイト、派遣、契約社員のことです。
    1700万人の非正規雇用者のうち、1300万人が年収200万円以下です。
    銀行の窓口業務も非正規雇用者にとってかわられつつあります。
    この層はこれからも増え続けます。(「連合」の組合員700万人の年収は700万円です。「連合」は分配の不公平に声を上げていません。)

図解のヒント
  • [オートシェイプ]―[フローチャート]―[せん孔テープ]。[左右反転]

2007年6月26日火曜日

ウェブ2.0とは総表現社会のこと

ウェブ2.0の世界

リアル、ウェブ1.0、ウブ2.0の比較

「人間は社会的動物である」とのべたのは紀元前のアリストテレスですが、ネットの世界にも、ウェブ2.0という形で、花開きました。産業革命以上におおきい情報革命の成果がウェブ2.0といえます。
  1. ウェブ2.0がネット社会、リアル社会に地殻変動を起こしています。
    ウェブ2.0とは、インターネット第2世代という意味で、ブログなどのように一般人が能動的に参加できるウェブのことです。
    ウィキペディア、ブログ、SNS、You Tubeなどが代表例です。
    これからはユーザーと制作者がフラットな関係になります。
    ボランティア活動が活発になると思われます。
  2. 従来のウェブとの最大のちがいは、どこでもだれもがウェブ上で情報の操作ができることです。

    いわばウェブ1.0が従来の大学の講義形式だとすれば、ウェブ2.0は大学祭、あるいは自主運営講座のようなものです。

  3. Google Mapsはユーザが情報を書き込めるようになっています。
  4. ウィキペディアのようにウェブ上で情報や機能が、不特定多数により、加工されるようになりました。
    不特定多数が信頼しあってこそ、可能になる作業です。(今までは、ブリタニカのように製作者が作った状態で完結しており、ユーザはそれを利用するだけでした。)
  5. ブ ログやMIXI、GREEのようなSNS(ソーシャルネットワークサイト)のように、多くのユーザが参加して情報を出し合うことで、その蓄積が全体として 巨大な集合知を形成します。
    これらは何回でも編集し直すことができます。
    ブログの更新情報の配布などに使われるRSSも注目されています。
  6. You Tube は個人が作成などした動画をネット上で 無料で投稿、視聴できるサイトです。
  7. 検索連動型広告やアフィリエイト広告により、多品種少量の商品が流通するようになりました。
    検索連動型広告 とは、検索をかけたキーワードに対応して表示される広告のことです。
    アフィリエイト広告とは、あるページに貼られた広告のことです。
    ユーザ がそこを経由して商品を購入したりすると、管理者に報酬が 支払われるというシステムです。
    また、あるページの内容に合致した広告を表示する自動掲載広告もあります。
  8. インターネットの社会では、自分から働きかけない限り、自分に何もおきません、存在しないのと同じです。
    働きかけることによって、新しい情報、機会、価値が生まれます。
    いま「総表現社会」が到来したといえましょう。


【cf.】IT略史

1986年サン・マイクロシステムズ、オラクル、マイクロソフト株式を公開
1995年アマゾン、イーベイ、ヤフー創業。「ウェブ1.0」

1980年代 パソコン
1990年代 インターネット
2000年代 ウェブ2.0 こちらとあちらの融合

日立、東芝、富士通、NECといった日本のIT企業は、インターネットやウェブ2.0への足がかりをつかめていません。

2007年6月12日火曜日

ロングテールは絶好のチャンス

ロングテール現象

  • ロングテール(Long Tail=長いしっぽ)現象とは、店頭にない無名の書籍などが、店頭の書籍の販売額を上回ったりすることです。
    リアル書店にはない無名の本が、アマゾンでは売り上げの8割を占めます。
    図の黄色の部分が書店であつかう品目で、恐竜の頭のように見えます。
    ブルーの部分が ロングテールです。
  • かつてのマーケット理論は「ニッパチの法則」でした。
    「2割の商品が売り上げの8割を占める」「航空会社の乗客の2割が売り上げの8割を占める」などです。
  • 今は市場という恐竜を支配するのは、ヘッドではなく、長いしっぽ(ロングテール)となってきています。
    ロングテールとは、ウェブ2.0の主柱をなす概念で、無数のYouのことです。
    紙媒体の雑誌はプロの書き手と編集者のコラボ(共同作業)ですが、ウェブ2.0では無数のYou(=ロングテール)が、 編集者を通さずにコンテンツをつくっていきます。
  • 米誌『Time』は、2006年の「Person of the Year(今年の人)」に「You(あなた)」を選びました。ネット社会がリアル社会に地殻変動を起こす「総表現者時代」の到来を予見した決定です。
  • ウェブ2.0の例としては、クチコミサイトの「価格.コム」「@コスメ」、Q&A コミュニティの「はてな」「OKWave」、SNS(ソーシャル ネットワークサイト)の「mixi」「GREE」、ブログの「ココログ」「エキサイトブログ」、さらには誰もが書き込めるネット上の百科事典「 ウィキペディア」、「アマゾン」の書評、動画共有サイト「YouTube」があります。
  • ロングテールは、長年にわたり市場経済を支配してきたニッパチの法則を打ち破るパラダイム (paradigm、枠組み)であり、無数のYouにとって血湧き肉躍るフロンティアの登場で す。

【追】
ブッシュはイラクという頭をたたくのに性急なあまり、うしろにひかえるイスラム世界というロングテールを無視しているようです。
世界の4人に1人がイスラ ム教徒です。
取るに足らない大多数はいまアメリカが発明した携帯電話やミニ兵器を使って、ものを言いはじめています。

イスラム世界は、かつての弟である西 欧にすさまじい怨念を何百年来有しています。
怨念は論理ではないので、ちっとやそっとでセットできません。
恐竜のしっぽはアメリカ一極支配を解体しはじめ ました。ロングテール効果を活用して、silent majority(声なき大衆)がいつのまにかvocal majority(声を出す大衆)になり、世界を変える契機をつかんだといえましょう。
イスラム教徒の人口

2007年5月29日火曜日

日本と中国は同文同種、一衣帯水でない

日本と中国は同文同種でもなく、文化的に一衣帯水でもありません。

1 日本は外来文化に積極的な社会であり、中国は閉鎖的です。

国境は動き、民族は入れ代わるのが世界史の常識です。

しかし日本は四面を海に囲まれており、近代まで 外敵から侵略される恐れがありませんでした。
5世紀に日本国家ができて以来、同じ場所に日本国家、日本人、日本文化はあります。
これは中国との大きな違いです。

日本人にとって、 外国は怖いものではなく 、いろいろな珍しい高い文化を提供してくれるありがたいものでした。
ここから「外来文化に積極的である」という日本文化の特質が生まれました。

中国は、紀元後2000年のうち800年間も、異民族によって支配されました。
異民族は自らの生存をおびやかす忌むべき存在です。
また、インドと同じく自ら文明を築き上げたので、外来文化に魅力を感じません。

日本人は、外来文化の流入を歓迎しますが、人は歓迎しません。

中国は50以上の民族がいることでわかるように雑多な民族からなり、人の流入には寛容です。しかし外来文化には警戒的です。


2 日本は情緒的な人間関係社会であり、中国はそうではありません。

人間は一人で生きるものではありません。
特に、狭いところに 沢山の人がすむ日本のような稲作社会では、お互いに助け合い、 頼りあって生きているのであって、 他者への配慮 がことのほか重要です。
個人は全体に隷属することを求められます。

また日本では、他民族との抗争がなかったので、行動基準に思想、理論よりも、情緒的な人間関係を行動基準にする傾向が強いです。
和が第一の日本に、大思想、大哲学、大宗教が生まれなかったのはそれを必要としなかったからです。

中国では、人間関係にしても、異族との対決が頻繁なため、不断に自己を論理で鍛えあげていく必要があります。
したがって大胆な論理社会になります。
中国社会は、 日本との共有点は少なく、インド、アラブ社会にはるかに近いです。


3 日本は細部に目がとどく社会ですが、中国はそうではありません。

日本の自然は、日本人が相手にできないほど凶暴でなく、努力し、 団結してあたれば、自然を自分たちの味方にできます 。
また、国防や民族、宗教問題がほぼなく、まとまりがよいので、こまいかいところまで目配りができ、そのために細部に目がとどく勤勉な社会ができあがりました。


このように、<外来文化に積極的>、<情緒的な人間関係>、<細部に目がとどく>ことが日本文化の特徴です。

顔かたちは似ていても、日本人と中国人はちがいます。
あまり同文同種意識をもちすぎると、なんらの予習なしでも、緊張感なしでも中国はわかるんだという短絡した態度になりがちです。
中国は近くにあるが、あくまでも遠い外国です。
中国はアメリカより理解するのがむずかしい外国です。

中国とは、「腹で話す」のではなく、論理でもって話すことが必要です。

2007年5月1日火曜日

モンゴルの強圧を引き継ぐ4大文明




ユーラシア大陸の4大文明は、モンゴルに支配されたのでモンゴルの遺伝を引き継いで、専制的です。
  • モンゴルは、中国に元(1271-1368)を建国しました。
  • モンゴルは、インドにムガール帝国 (1526-1858)を築きました。ムガール帝国はイスラム王朝で、インドをイギリス侵入まで、300年間支配しました。ムガールは「モンゴル」に由来します。世界屈指のイスラム建築タージ・マハールもこのころのものです。
  • モンゴルは、ロシアにキプチャク・ハン国(1243ー1502)を建て、250年に渡ってロシアを支配しました。キプチャク・ハン国の前には、ロシアに国家はありませんでした。キプチャク・ハン国のあと、ロマノフ王朝がモンゴル体制を引き継ぎます。
  • モンゴルは、イランを中心とした西アジアに、イル・ハン国(1258-1353)を建てました。
国家とは、国民をしあわせにするためにあるものです。

上の文明にとっては、民主主義はそのための手段です。目的ではありません。

したがって、強圧的にでも、イラクをまとめていたフセインの方が、イラクを破壊したアメリカ民主主義よりすぐれている、と考えます。

専制も、社会を統一し、秩序だて、安定させ、国民をしあわせにするためには必要だ、と主張します。

上の地域では、国土が広大で、多くの人種、宗教を抱え込んでいます。人間を飼い慣らさなければ国家を作れません。文明、宗教は人間の飼い慣らしシステムとなっています。

2007年4月17日火曜日

専制にならざるをえない4大文明



大陸中央の遊牧民族は、みずからは生産せず、戦争と破壊を古来から繰り返してきました。

4文明は、成熟、民主化しようとしても、いつ攻撃されるかもしれず、また領土が広大なので、独裁、専制、統制を主にせざるを得ませんでした。

遊牧民族の戦争圧力を受けることがなかった西欧と日本は、のんびりと民主化にいそしむことができました。

【cf.】
  • 梅棹忠夫『文明の生態史観』中央公論社、1967年
  • 梅棹忠夫編『文明の生態史観はいま』中央公論社、2001年
  • 川勝平太『文明の海洋史観』

2007年4月13日金曜日

独裁制が必要な時期もある

キッシンジャーが「イラクはスンニ派、シーア派、クルド人に分かれていて、国家の状態にはない。民主主義はまだ問題外だ」といっています。("Kissinger:Democracy in Iraq is unattainable, JT,2006-11-20)。

はじめからわかっていたことです。

わたしが大学生の頃40年前には、アジアの国々は、日本とインドをのぞいては、軍事独裁制を敷いていました。軍事独裁制がおさない国民をまとめる最良の手段と考えられていました。


  • 台湾も韓国も軍事独裁制により国の秩序を維持し、苦難の末経済成長を達成し、国民も豊かになりました。そのことでお金や自分以外のことを考える余裕ができ、成長し、徐々に民主化への道を歩み始めました。あとに続く東南アジア諸国も同様です。(しかし自由が行き過ぎた場合は、タイのように国民が軍部専制回帰を選ぶこともあります。)

  • 今のシンガポールの発展は、民主主義からは生まれなかったでしょう。

  • いま中国もロシアも、民主制や自由よりも秩序を優先しています。民主主義はまだできたばかりの制度で、すべての国で最良の制度ではありません。ロシアでは、ゴルバチョフの民主化はロシアを崩壊に導いてしまい、プーチンはもとの独裁制に戻しています。

  • アメリカは戦後フィリピンに民主主義を与えて失敗しました。

  • 中南米諸国も、アメリカから与えられた民主主義、自由により、経済は破綻し社会は安定していません。

  • イラクやアラブの多くの国々には、なによりも秩序や独裁が必要です。

生まれも育ちもちがう5歳の子供の集団に必要なのは、デモクラシーやフリーダムではなく、父親によるしっかりしたしつけです。

(温家宝首相、来日を機に)